こんにちは、ごきげんくんです!
あしたの健康づくり研究所では、衛生工学衛生管理者、健康経営エキスパートアドバイザーの免許・資格を有するごきげんくんが、健康づくりの秘訣や健康管理のアドバイスを発信しています。
これまでの記事では、国の優良な健診制度で完全無料の労災二次健診について、その概要や申込の方法を解説してきました。
まだご覧になっていない方はそちらも合わせてご確認くださいね。
厚労省のデータによれば、2013年度の制度創設から、労災二次健診の受診者数は増加しています。
(参考)「労働者災害補償保険法における二次健康診断等給付の健診費用の額等のあり方に関する検討会報告書 (令和2年5月)
しかし、健診センターの営業担当として、実際に会社に提案していた私の肌感覚からすると、会社の認知度はまだまだ低いです。
その原因のひとつとして考えられるのは、一次健診(会社の健診や人間ドック)を実施する医療機関(以下、健診センターと総称します)が労災二次健診を積極的に活用して、健康管理をしていきましょうと、提案していないからだと考えます。
受診者ともっとも距離感が近く、健康管理を積極的に担っていく存在は、健診を実施した健診センターです。健診センターの後押しがあれば、会社もこの制度のことを知り、活用を検討するかもしれません。
健診当日に労災二次健診の案内をしたり、もしくは後日、結果表を郵送する際に案内文を同封する先進的な健診センターも、もちろんあることでしょう。
しかし労災二次健診は、未だ知る人ぞ知る健診制度です。
それでは、
「なぜ一次健診を担う健診センターがもっと積極的に労災二次健診について提案しないのか」
ということを疑問に思いませんか?
本記事では、その疑問を元健診センター勤務のごきげんくんが解説していきます。
目次
健診センターが労災二次健診を提案しない理由を解説
健診センターが労災二次健診について知らない
労災二次健診を提案しない理由の大半は、そもそも健診センターのスタッフが本制度について知らないということです。8割程度はこの理由があてはまると思います。
また「労働者が業務や通勤が原因で負傷したり、病気になった場合に窓口で治療費を負担することなく医療サービスが受けられる」労災指定病院と誤解される場合もあります。
労災指定病院でなくとも、もちろん労災二次健診は受診可能です。
診療体制が整わない
労災二次健診では採血、頸動脈エコー検査、心臓エコー検査、特定保健指導を実施します。とても精密な健診なので、検査時間も有します。
専用の体制が整っていない病院やクリニックで、診療の合間に対応するのは却って効率が悪く、受診者を待たせてしまいます。
労災二次健診用のスケジュールを組み、対応する医療機関でないと難しいでしょう。
一次健診を実施する健診センターは「一次健診」の対応に追われるので、労災二次健診まで対応するには、それなりのスタッフが必要になります。
医療従事者のスキルの問題
まず心臓エコー検査、頸動脈エコー検査が出来る臨床検査技師が必要です。
私は当初、検査技師なら検査全般をすべて対応できるものと思っていました。
このような精密な検査を行うには、訓練と臨床経験が必須です。
健診センターに勤務していたときにも、これらの検査を担当可能な技師は少数でした。
また特定保健指導については「医師又は保健師の面接による指導」が必要です。
生活指導、運動指導、栄養指導が可能な保健師がいる医療機関も限られます。
また特定保健指導を行うには、相手に寄り添い、生活習慣の改善をアドバイスするためのコミュニケーションスキルも求められます。受診者の行動変容を導くための必須なスキルといえます。
請求業務の煩雑さ
労災二次健診は無料で受診可能だと解説してきました。受診者の窓口負担はありませんが、この健診にかかった費用については健診センターから都道府県労働局へ請求します。
受診者ひとりにつき数種類の書類を準備し、それを郵送するのですが、なんと書類が複写形式になっているので、手書き記入が必須となります。
私は一か月に数十件の請求対応をしていましたので、事務処理の時間が結構かかっていました。
デジタル化、DX化が進まない医療業界特有の問題かもしれません。
少し前まで、請求にあたり押印も必要だったのですが、最近では押印不要となりました。
徐々に改善はされてきているようですが、まだまだ事務作業の煩雑は残るので、対応に手が回らないという健診センターも多いのではないでしょうか。
指定医療機関になる必要がある
労災二次健診はどこの医療機関でも実施出来るというものではありません。
厚労省 (各都道府県労働局)から二次健診等給付指定医療機関の認定を得る必要があります。
申請の手続きは複雑ではないのですが、ここでもまたひとつハードルがありますね。
さいごに
上記が、健診センターが労災二次健診を受診者に提案しない理由であり、かつ健診センター自身が労災二次健診の実施医療機関となろうとしない理由であるともいえます。
一次健診を担う健診センターが、労災二次健診を健康管理の有効なツールとして活用すること、健診センターで対応が難しければ、地域の対応可能な医療機関と連携すること等が、
今後さらに労災二次健診を普及させていくうえで必要であると考えます。
労災二次健診はまだ知る人ぞ知る健診です。
この健診について知ったあなたは、健康管理を行ううえで大きなアドバンテージを手に入れました。
是非有効活用し、健康づくり、健康管理を加速させましょう。
会社にとっても、この労災二次健診は健康経営の強い味方となってくれることでしょう。