【巡回バス健診のメリット・デメリット】健診のプロが考察

健康管理

こんにちは、ごきげんくんです!

あしたの健康づくり研究所では、衛生工学衛生管理者、健康経営エキスパートアドバイザーの免許・資格を有するごきげんくんが、健康づくりの秘訣や健康管理のアドバイスを発信しています。

早速ですが、あなたはどのような内容の健診を受けていらっしゃいますか?
またそれはどのような方法でしょうか?

健診には人間ドック、生活習慣病健診、特定健診、一般健診、特殊健診等さまざまな種類があることをご存じでしょうか。人間ドック、生活習慣病健診については、実は決まった項目がありません。

健診の項目を健康保険組合等の保険者や会社が指定する場合もあれば、健診センターがパックで用意している場合もあります。

ですので、前者の質問については、受診者であるあなたは、もしかしたらあまり意識されたことがないかもしれません。

実際に、私が健診業界で法人営業をしていた際に、会社の健康管理担当者にヒアリングしたところ、自社の健診内容について正確に理解されている方は、非常に少なく、3割程度でした。だとしたら、受診者本人のほとんどは、ご自身の受けている健診について理解されていないことが多いことでしょう。

一方、後者の質問、健診の実施方法については明確にお答えいただけることでしょう。
健診の実施方法については、大きく分けて、2種類あります。自ら健診センターに受診にいく、施設健診と健診バスが会社等の指定場所に出張してくれる巡回バス健診があります。

本記事では巡回バス健診をとりあげ、解説します。
ご自身の健康管理のことですので、健康管理担当者だけでなく、受診者本人にもぜひ、特徴について知っておいていただきたい内容です。

このような方におすすめ
・健康管理担当者
・巡回バス健診の特徴を知りたい
・自身の健康管理をもっと充実させたい

押さえておきたい巡回バス健診の特徴

私は施設型健診と巡回バス健診の両方の運営に関わった経験から、バス健診を以下のように特徴づけます。

巡回バス健診の特徴
  • 会社主導で行われる
  • 会社側にメリットが大きい

巡回バス健診では会社側が健診センター等の実施団体と契約を結び、検査項目を検討し、日程調整を行い、健診を実施します。
検査項目については、会社の予算の都合上、労働安全衛生法に準拠した最低限の項目で設定する場合もあれば、充実した健康管理を図る目的で項目を追加する場合もあります。

検査項目を決めるのも、健診時期を決めるのも、会社の方針次第ですし、会社が主導で行うため、従業員はそれに従うしかありません。ただし、より精密な内容の健診を受診したい場合には、自己負担で人間ドックを受診し、結果表を会社に提出することで、法定の健診に替えることは可能です。

また指定した日程で従業員に健診を受けさせるので、健康管理を集団で行うのに効率がよいことも特徴です。
さらに健康管理担当者は受診の案内から、健診後のフォローまで効率的に進めることができます。

そのうえ会社まで出張してくれて、従業員の健診をまとめて実施してくれる巡回バス健診の方が、実はコストが安価なのです。

以上のようなことからも巡回バス健診は会社側にメリットが大きいと言えます。

会社側のメリット
  • 健康管理が効率的(予約、支払い、結果データ管理、健診後のフォロー)
  • コストが安い

巡回バス健診のメリット

以上の特徴を踏まえ、さらに巡回バス健診のメリットを深堀します!

一度に多くの人数が受診可能

健診項目、男女の割合、健診実施時間等により異なりますが、5~6時間待機して100人程度の受診に対応できます。

人数制限の影響を受けにくい

施設健診の場合は、他社の受診者も受診します。一般的に事前予約制で、一日に受診可能な人数が決まっていますので、会社の希望が考慮されにくく、受診者は基本的に複数の日程に割り振られます。

一方巡回バス健診では、その会社専用にスケジュールをとるので、健診スケジュールは施設健診ほど分散されません。ただし、受診者の仕事を考慮し、複数日程に分けておくことは必要です。

就業時間中に受診可能

法定健診の場合には会社は従業員に健診を受けさせる義務がありますので、従業員は仕事の合間に受診することが可能です。よって受診者は別途休みをとって、健診を受けにいく手間が省けます。
会社としても、受診者に受診を勧めやすいのはメリットです。

健診データの集団集計をしてくれる

会社として集団で受診することで、健診実施業者は健診結果を集団で集計することが可能になります。

従業員が50人以上いる場合に、健康管理担当者は、各健診項目の「有所見者数」や「医師の指示人数」を集計したうえで、『健康診断結果報告書』を労働基準監督署に報告しなければなりません。

集団受診のメリットを活かして、健診実施業者がサービスで集計までしてくれる場合が多いので、健康管理担当者にとっては省力となります。

巡回バス健診のデメリット

以上のようにメリットが多い一方で、デメリットについても考慮する必要があると思います。
既に巡回バス健診で健診を実施している場合には、再度本内容を確認いただくとよいでしょう。

少人数の健診に対応しない

メリットの裏返しとなりますが、少人数に対応していません。そもそも健診の費用が安く、出張までするのでコストがあいません。業者が対応可能な人数は30人以上が目安です。
ただ、業者が対応可能であっても、受診者数が少ないので健診スケジュールは融通がききにくくなることもありますし、人件費削減のため、出動するスタッフ数も少人数となるでしょう。安全な健診とその後のフォローもきちんと行える業者を見極めてください。

健診自体の満足度は高くない

巡回バス健診では大人数を効率よく対応することが求められます。
それは「機械的」に「こなす」と言い換えることが出来るかもしれません。
巡回バス健診の特性上、致し方ないのですが、ひとりひとりに寄り添うというより、流れ作業です。
みなさんが学生時代に受けた、学校健診をイメージしていただいたらよいかと思います。

さらに、人件費削減のため、医療従事者が、その健診のために外部から派遣されたパートやアルバイトであることが多いです。

健診業務に慣れている方が対応することが多いのでしょうが、技量や接遇態度はひとそれぞれです。

全体的にチームとして受診者の満足度を高めていくという認識は低いと考えます。

実施可能な検査が限られる

私は、巡回バス健診を、就業の可否や適正配置等を判断するため、法律に定められた健診を効率的に行う方法であると認識しています。

あくまで簡易なスクリーニング検査としてとらえているため、施設型健診と比較すると物足りないと考えます。

巡回バス健診では対応可能な血液検査も限られますし、胃カメラ、超音波検査、CT、MRIは施設健診でないと実施できません。

巡回バス健診で有所見がなかったからと安心してしまわないことが大切です。検査を行った範囲では問題がなかったということですので、定期的により精密な人間ドック等も合わせて検討されるのが良いと思います。

検査の実施環境の影響をうける

巡回バス健診は、胸部レントゲン検査は専用のバスで実施しますが、その他の検査は会社の部屋をお借りして行います。事前に下見をし、適切な環境のもと検査をしますが、実施環境が常にベストであるとは限りません。

例えば、聴力検査の場合、会社から提供を受けた空間をパーティションで区切っていくのですが、周辺が騒がしく、聴力検査に適さない、配慮が必要だと感じる現場をこれまで多数みてきました。

また心電図検査を実施する場合には、ベッドの設置が必要です。医師の診察についても、プライバシーが配慮されるべきだと考えますので、適切な健診環境の整備が出来るかも課題になると思います。

さいごに

以上のように、巡回バス健診の特徴、メリット、デメリットについてまとめました。
受診者視点、または会社視点で何を優先するかにより、許容できることもあると思います。

忙しいビジネスマンにとって、巡回バス健診は時間効率もよく、手軽に受診できる点では優れています。
会社側にとってはコスト面、健康管理面でメリットがあります。

半面、健診の質、受診者満足という観点からはデメリットもうかがえます。

巡回バス健診のメリット、デメリットの双方を理解したうえで、より効果的な健康管理を模索していただければと思います。

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